対応している血液浄化療法
オンライン HDF(血液濾過透析)
高血圧と慢性腎臓病の悪循環について
腎臓では、血液に血圧という圧力がかかり腎臓というフィルターでろ過を行い、余分な水分や老廃物を取り除いて血液をきれいにし、尿をつくっています。
HDF(Hemodiafiltration)は血液透析(HD)と血液濾過(HF)を組み合わせて、その両者の長所を取り入れつつ欠点を補う改良型の治療方法です。血液透析(HD)の小分子物質を除去する能力と、血液濾過(HF)の中~大分子量物質(β2-MGなど)を除去する能力を併せ持つ治療法となります。

●血液透析(HD)
分子量の小さい老廃物(BUN:尿素窒素、Cre:クレアチニンなど)を除去しやすいが大きな分子は除去しにくい性質があります。
●血液濾過(HF)
血液を体外へ取り出し、ヘモフィルターというろ過器を通して血液に圧力をかけて濾過する方法のため、大きな分子を除去することができます。比較的分子量の小さな老廃物の除去は血液透析(HD)と比べると劣ります。
"オンライン"HDFとは
HDF(血液濾過透析)には「オフラインHDF」と「オンラインHDF」という2種類の治療法があり、その違いは、主に老廃物を濾過するための補充液量の差です。
●オフラインHDF
瓶や補液バッグに入った薬剤を補充液として使用します。
●オンラインHDF
透析液をそのまま補充液として使用します。そのため、オフラインHDFと比較するとオンラインHDFのほうがより多くの濾過を行うことができ、より多くの老廃物を取り除くことが可能になります。
オンライン HDFの特徴
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透析アミロイド症の発症や進展を抑制します。
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イライラ感、下肢のむずむず感などの改善が期待されます。
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貧血が改善しやすいと言われています。
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透析中の血圧が安定すると言われています。
厳重な透析液の水質管理
オンラインHDFでは、透析液を直接体内に注入しているため、厳重な透析液の水質管理が求められます。
安全なオンラインHDFを提供するために、臨床工学技士が定期的に水質検査を行い、透析液が無菌かつ無毒であることを確認しています。


長時間血液透析
長 時間血液透析とは
当院では一部のベッドで長時間透析を行っています。
長時間透析とは週18時間以上の透析(週3回であれば1回6時間以上の透析、隔日透析であれば1回5時間以上の透析)と定義されています。
「透析不足による合併症」を防ぐ
日本の透析水準は世界一ですが、その一方で透析患者さんの寿命は健常人に比べてまだまだ短く、患者さんは透析特有の合併症に悩まされます。4時間程度の透析では血液中の尿毒素は除去できても、細胞内の尿毒素まで十分に除去することはできません。こうして、尿毒素が蓄積した結果、様々な合併症が起こるのです。 したがって透析合併症の多くは、「透析不足による合併症」と言えます。
しかし、長時間透析を行えば、体内の尿毒素を十分にとることができるため、血圧は下がり降圧薬は減量ないしは不要になります。またリンやカリウムも問題にならなくなり、リンの吸着薬やカリウムの吸着薬も減量ないしは不要になります。更に、貧血は改善し造血ホルモンの使用量は減り、何より多少体重増加があっても長い時間をかけて緩徐に除水することから、急激な血圧低下を来さず無理なく透析できるのです。
そのため健常者とほぼ同等に食べることができます。しっかり食べる結果、栄養状態も良好となり、このことが長時間透析患者の良好な生存率につながっていると考えられています。

長時間血液透析の特徴
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透析食ではなく健常者とほぼ同じ食事ができ、栄養状態が格段に良くなる薬の服薬量を大幅に減らすことができます。
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ゆっくり除水するため急な体液変動による体への負担が少なく、透析中の不快な症状が発生しにくいとされています。
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皮膚のかゆみや色素沈着などが著しく改善します。
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透析アミロイドの蓄積による関節痛等の症状が起きにくいとされています。
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4間程度の短時間透析に比べ、格段に生命予後が良くなります。
(1992年、フランスのCharra博士の論文では、1回8時間、週3回透析を行うことで10年生存率は75%、20年生存率は43%で、当時の日本の生存率の2倍近い良好な成績でした。)
腹膜透析(PD)
腹膜透析とは
腹膜透析は、お腹の中の臓器を覆っている腹膜を利用して透析をする方法です。
お腹の中に透析液を一定時間いれておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物が透析液側に移動します。その老廃物や水分を含んだ透析液を身体の外に出すことで血液をきれいにします。

新しい透析液

古い
透析液

新しい透析液
排出と注入を
繰り返す
初回導入時
PDファースト
「PDファースト」とは、腎不全が進行して透析治療が必要となった時に「腹膜透析(PD)から始める」という選択をすることです。腹膜透析(PD)は、血液透析(HD)と比較して残存腎機能を保持できることが明らかになっており、その重要性が高まっています。
腹膜透析の特徴
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自宅や職場などで治療します。
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本人や介護者が治療を行い、通院は月に1~2回です。
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寝ている間に器械を使って自動的に行う方法(APD)と、日中に4~12時間ごとに行う(1回の治療は30分程度)方法(CAPD)があります。
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腹部にカテーテルという細いチューブを埋め込む手術をします。
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個人差はありますが、血液透析(HD)と比べ、透析導入後も残っている腎機能をより長く保つことができ、尿が出なくなる時期を遅らせることができます。
APD

CARD

顆粒球吸着療法(G-CAP)
顆粒球吸着療法とは
顆粒球吸着療法は、炎症性腸疾患に対して炎症の原因となりうる顆粒球を選択的に除去および機能を変化させることによって炎症を鎮める効果があります。この治療は潰瘍性大腸炎に対して2000年4月より、また2009年1月からはクローン病に対しても保険適用となりました。
顆粒球吸着療法は、血液を一旦、体外に連続的に取り出し、炎症に関与している顆粒球を選択的に除去する医療機器(顆粒球吸着器)に通し、その後血液を体内に戻すものです。治療は基本的には1回約60分の治療を10回行います。患者さんの病状にもよりますが、必ずしも入院でなければ受けられない、という治療ではありません。

期待される治療効果
顆粒球吸着療法を行うと、下痢や血便、発熱などの症状、また、内視鏡的にも改善が期待されます。
この治療は薬物療法・外科療法に続く、非薬物療法である第三の治療法です。体内に薬などの成分が送り込まれて効果を発揮する治療ではなく、炎症に関与する血液成分を取り除く治療で、薬物療法に比して重篤な副作用が少ないのが特徴です。
当院でも、今までの治療法で病状のコントロールが難しかった患者さんや、ステロイドを減らしたい患者さんについても効果が見られていますので、この治療の対象となる方は、試してみる価値はあるでしょう。

予想される副作用
潰瘍性大腸炎ならびにクローン病に対する治験の結果では、副作用は頭痛・嘔気・めまい等、体外循環特有の症状が見られましたが、いずれも一過性で軽度であったと報告されています。当院ではこれまで大きな問題となった副作用は発生していません。